胃炎
胃炎とは
食べ物や飲み物は口から入ると、胃から分泌された胃酸によって消化されます。
胃酸は消化の役割だけでなく、口から入った細菌や微生物を殺菌する役割も担っています。
胃酸から胃粘膜を保護するために、粘液によって胃粘膜が覆われています。粘液は胃粘膜を傷つけた場合にも修復作用を持ち、胃酸からの保護を助けています。
しかし、香辛料やアルコール、油分、熱い・冷たい飲み物などの刺激の強い飲食物が胃に入ると、粘液だけでは胃粘膜を完全に保護することができず、胃酸による炎症が起こる可能性があります。
また、消化機能は自律神経によって調整されているため、不安やストレスなどで自律神経に影響を与えると、正常な消化機能が妨げられ、胃の炎症や痛みが生じることもあります。 粘膜表面のびらんのただれや炎症などの軽度の胃炎が繰り返し起こると、修復力が低下し、粘液の分泌も減少してしまいます。その結果、胃潰瘍が形成される可能性があります。
胃炎の症状
急性胃炎
下記の症状が、急激に起こります。
胃の中が激しく傷つくと吐血や下血を起こす場合もあります。
- 胃やみぞおちの痛み・膨満感
- 胃のむかつき
- 嘔吐
慢性胃炎
下記の症状が空腹時や決まった時間に現れることがあります。
慢性胃炎は、自覚症状が無く進行していく場合もあります。
- 胸やけ
- 胃のむかつき
- 胃もたれ
- 食欲不振
胃炎の原因
急性胃炎
暴飲暴食
過度な食べ過ぎや急激な食事の摂取によって、胃の負担が増加し胃炎を引き起こすことがあります。
アルコールの過剰摂取
アルコールは胃の粘膜を刺激し、胃酸の分泌を亢進させるため、過剰な飲酒は胃炎の原因となります。
薬の副作用
特定の薬物や一部の抗生物質は、胃の粘膜に刺激を与えたり胃酸の分泌を増加させたりするため、胃炎を引き起こすことがあります。
刺激物の過剰摂取
唐辛子やスパイス、酸っぱい食品などの刺激物を過度に摂取すると、胃粘膜が刺激されて炎症が起こり、急性胃炎を引き起こすことがあります。
慢性胃炎
慢性胃炎は、主な原因としてピロリ菌感染が挙げられます。
ピロリ菌は胃の中で生息し、胃酸の分泌されている環境でも生存できる特性を持っています。ピロリ菌感染により胃炎が引き起こされ、胃粘膜が傷つくことで慢性胃炎が進行する可能性があります。
さらに、慢性胃炎が進行すると萎縮性胃炎と呼ばれる状態になることもあります。
萎縮性胃炎は、胃がんの発症リスクが10倍以上に上昇するといわれています。 ピロリ菌感染が確認された場合、早期に除菌治療を行うことが重要です。除菌治療は、特定の抗生物質と胃酸抑制薬を併用することでピロリ菌を根絶する治療法です。
ピロリ菌の除去により、胃炎の進行や萎縮性胃炎、さらには胃がんのリスクを低減することが期待されます。
胃炎の検査
急性胃炎
患者様の症状や経過、摂取した飲食物、お薬の服用状況などについて詳しく問診を行います。
必要に応じて内視鏡検査を実施することもあります。内視鏡検査では、胃粘膜の状態や異常があるかどうかを確認することができます。内視鏡検査は非常に有用であり、胃炎やその他の胃の病気の診断に役立ちます。
問診と内視鏡検査の結果にもとづいて、適切な治療法や管理方法を決定します。
内視鏡検査が必要な場合は連携する医療機関をご紹介させていただきます。
慢性胃炎
慢性胃炎が疑われる場合、内視鏡検査を検討することがあります。内視鏡検査では、胃粘膜の状態や異常があるかどうかを確認することができます。
また、必要に応じて組織を採取してピロリ菌の感染の有無を調べることも可能です。
慢性胃炎は進行すると萎縮性胃炎になり、胃がんのリスクが高まる可能性があります。
内視鏡検査が必要な場合は連携する医療機関をご紹介させていただきます。
胃炎の治療法
薬物療法
症状を詳しくお伺いし、それにもとづいて胃酸分泌抑制剤、胃粘膜保護薬、胃の運動機能改善薬などのお薬を処方します。
市販薬でも症状が一時的に改善することがありますが、胃炎の症状が繰り返す場合は、ご相談ください。 胃炎が、気が付かないうちに胃がんへ進行している場合もありますので、自己判断での対処は危険です。
胃の症状が繰り返す場合や慢性化している場合は、早めに医療機関を受診して適切な診断と治療を受けることが重要です。
生活習慣の改善
胃酸の分泌が過剰になると、胃炎のリスクが高まります。そのため、暴飲暴食やアルコールの過剰摂取、刺激の強い香辛料、油分の多い食事などは控えるようにしましょう。
また、ストレスや不安も消化機能に大きな影響を与えるため、規則正しい生活リズムを整えることや十分な睡眠や休息を取ることも重要です。 食事の際には、ゆっくりと咀嚼することや、食後すぐに横にならないことも心掛けましょう。
喫煙は胃酸分泌を刺激するため、禁煙することも胃の健康維持に役立ちます。
ピロリ菌の除菌治療
ピロリ菌による慢性胃炎の場合は、除菌治療を行います。
除菌治療は、通常は2種類の抗生物質と胃酸を抑える薬を1日2回、1週間に渡って内服する薬物療法です。
服用から1か月後に除菌が成功しているかを判定します。 もし除菌が成功しなかった場合、再度、除菌治療を検討することがあります。
2回目の除菌治療では、別の抗生物質の組み合わせや治療期間の変更などが行われることがあります。
胃腸炎
胃腸炎とは
胃腸炎は、胃や小腸、大腸などの腸管に炎症が生じる疾患であり、急な下痢や嘔吐、発熱などの症状が現れることがあります。ウイルス感染によって引き起こされることが多いですが、ストレスなどの非ウイルス要因による発症もあります。
食べ物による感染もあり、この場合は「食中毒」と呼ばれます。 胃腸炎は一般的な病気であり、感染が広まる可能性もあるため、注意が必要です。
胃腸炎の症状
感染性胃腸炎の場合
- 突然の嘔吐と下痢
- 吐き気や嘔吐感があり、嘔吐の回数が多い
- 下痢は水様性またはふやけた便となり、頻繁に排便する
- 腹痛や腹部の不快感、痙攣性の痛みが現れる
- 体のだるさや倦怠感、発熱がみられる
非感染性胃腸炎の場合
- 嘔吐や下痢の症状が現れることもありますが、感染性胃腸炎に比べて軽度
- 腹痛や不快感、胃もたれ感がある
- 発熱はほとんどみられず、体のだるさや倦怠感も軽度
- 消化器官の粘膜の炎症が進行すると、吐血や血便が見られることも稀にある
胃腸炎の症状は通常数日から1週間程度続き、徐々に回復していきます。
ただし、個人差があり、症状の重さや持続期間は人によって異なる場合があります。
胃腸炎の原因
胃腸炎の原因は、大きく分けて感染性胃腸炎と非感染性胃腸炎の二つに分類されます。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌による感染が主な原因です。例えば、ロタウイルスやノロウイルス、アデノウイルスなどのウイルスが感染の原因となることがあります。これらのウイルスによる感染は、特に幼児期に多くみられます。
また、サルモネラ菌や病原性大腸菌、カンピロバクター菌などの細菌による感染も胃腸炎を引き起こす原因となります。
これらの細菌感染は夏に増加する傾向があります。
非感染性胃腸炎
非感染性胃腸炎は、感染以外の要因によって引き起こされます。ストレスや心因性の機能性胃腸症による胃腸炎、冷たい食べ物の摂取による腸管機能の障害、寄生虫の感染、毒性のある化学物質の摂取などが原因として考えられます。
胃腸炎の感染経路
感染性胃腸炎の場合、感染者の嘔吐物や便を介して人から人へ感染することがあり、感染経路はいくつかあります。
接触感染
感染者の嘔吐物や便に触れた手を通じて感染することがあります。感染源に触れた手で口や食品を触れることでウイルスや細菌が口から侵入し、感染が広がります。
飛沫感染
感染者の嘔吐物や便が乾燥し、小さな粒子となって舞い上がり、吸入することによって感染することもあります。これは特に嘔吐物が乾燥した状態で風によって舞い上がる場合に起こります。
食品による感染
汚染された食品を摂取することで感染することがあります。ノロウイルスの場合、二枚貝などの生食や十分に加熱されていない食品の摂取によって感染することがあります。
細菌の場合、サルモネラ菌は鶏肉や卵、カンピロバクターは豚肉や鶏肉、病原性大腸菌は牛肉などの生または十分に加熱されていない肉から感染することがあります。
胃腸炎の検査および診断
胃腸炎の検査は、一般的には症状や所見にもとづいて診断されますが、特定の状況や重篤な症状がある場合には、追加の検査が行われることもあります。
一般的な検査方法には、血液検査、便検査、胃内視鏡検査などがあります。
血液検査では、炎症マーカーや電解質の異常を確認することができます。
便検査では、病原体や炎症の兆候を調べることができます。
また、胃内視鏡検査では、胃や腸の内部を観察し、異常や炎症を確認することができます。
これらの検査結果にもとづいて、正確な診断と適切な治療を行います。
内視鏡検査が必要な場合は連携する医療機関をご紹介させていただきます。
胃腸炎の治療
胃腸炎の治療は、主に症状の緩和や炎症の改善を目指します。
水分補給が重要であり、経口補水液や塩分補給が推奨されます。また、嘔吐や下痢の症状を軽減するため、吐き気止めや下痢止めの薬が処方される場合もあります。症状の重篤さや原因によっては、抗生物質や抗ウイルス薬が使用されることもありますが、一般的な胃腸炎には特定の薬剤は使用しません。
また、食事に関しては、胃腸の負担を軽減するため、消化の良い食事や消化器官を刺激しない食材を摂取することが大切です。症状が改善したら、徐々に通常の食事に戻していきます。
ただし、症状が重篤で持続する場合や合併症の可能性がある場合には、医師の指導の下での治療が必要です。