脂質異常症とは
血液中には、コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド/TG)などの脂質が含まれています。過剰な脂質や脂質のバランスの悪さは、動脈硬化の発症や進行させる要因となります。以前は脂質の多さだけが注目され、高脂血症と呼ばれていましたが、血液中の余分な脂質を回収する役割も動脈硬化に大きく関与していることが分かり、脂質のバランスが正常範囲に収まらない状態を脂質異常症と呼ぶようになりました。
コレステロールについて
コレステロールにはLDLコレステロール(悪玉)とHDLコレステロール(善玉)の2種類が存在し、LDLコレステロールは動脈硬化の発症や進行に関与します。一方、HDLコレステロールは余分なコレステロールを回収し、動脈壁に沈着したコレステロールを除去する役割を果たしています。HDLコレステロールの低下は、悪玉のLDLコレステロールが過剰ではなくても動脈硬化のリスクを高めることがあります。
脂質異常症の種類
血液中の脂質には、悪玉であるLDLコレステロール、善玉であるHDLコレステロール、そして中性脂肪(トリグリセライド/TG)が含まれています。
高LDLコレステロール血症
LDLコレステロールが過剰に存在する状態
低HDLコレステロール血症
HDLコレステロールが不足している状態
高トリグリセライド血症
中性脂肪(トリグリセライド/TG)が過剰に存在する状態
脂質異常症の原因
脂質異常症の原因は、運動不足、肥満、喫煙、飲酒、食生活の乱れ、ストレスなどが考えられます。特に、内臓脂肪型肥満であるメタボリックシンドロームでは、LDLコレステロールや中性脂肪の値が高くなり、HDLコレステロールの値が低くなりやすいとされています。また、遺伝的な要因も関与しており、遺伝性の脂質異常症である家族性高コレステロール血症では、動脈硬化が進行しやすい傾向があります。
脂質異常症の検査
朝9時に空腹時の採血検査を受ける場合、前日の夜11時までに食事を終える必要があります。絶食時間は10時間以上となりますが、絶食中は糖分の含まれないお茶や水を摂取して頂いても問題ありません。
脂質異常症診断基準
LDLコレステロール
140㎎/dl以上 高LDLコレステロール血症
120~139mg/dl 境界域高LDLコレステロール血症
HDLコレステロール
40mg/dl未満 低HDLコレステロール血症
中性脂肪(トリグリセライド/TG)
150mg/dl以上 高トリグリセライド血症
Non-HDLコレステロール
170mg/dl以上 高Non-HDLコレステロール血症
150~169 mg/dl 境界域高Non-HDLコレステロール血症
※Non-HDLコレステロールは、総コレステロールから善玉のHDLコレステロールの数値を引いた値です。
脂質異常症の治療
脂質異常症の進行は動脈硬化も進行し、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、閉塞性動脈硬化症などの重篤な疾患のリスクを高めます。動脈硬化発症や進行のリスク要因である高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、喫煙習慣、肥満などの有無や状態の把握も適切な治療には不可欠です。
メタボリックシンドロームと呼ばれる内臓脂肪型肥満では、脂質異常症、高血圧、糖尿病のうち2つ以上の要素が存在すると、それぞれの数値が境界域程度であっても動脈硬化リスクが著しく上昇することが分かっています。
肥満の場合は、標準体重まで減量し、その体重を維持することが脂質異常症を含む生活習慣病の予防に役立ちます。適切な運動や生活習慣の改善を通じて、標準体重を維持することを目指しましょう。
栄養バランスがとれた食事
野菜、海藻、きのこ、こんにゃくなどを摂取することで食物繊維を十分に補給し、食後の血中コレステロール値の上昇を抑えることができます。同時に、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸といった動物性脂肪やマーガリン、ショートニングなどの摂取を控えることも重要です。さらに、炭水化物、脂質、ミネラル、ビタミンなどの栄養素をバランスよく摂ることが大切です。
習慣的に行う有酸素運動
週に3回以上、軽い汗をかく程度の有酸素運動を約30分行うことで、血行が改善され、筋力も増加し、基礎代謝が向上します。これにより、摂取したカロリーを消費することができます。
節酒
アルコールの摂取は、中性脂肪(トリグリセライド/TG)値を上昇させるため、脂質異常症の予防にはアルコール摂取を適量に抑えることが重要です。