血液検査の異常

血液検査とは

血液検査とは血液検査は、体の中の情報を調べるための検査です。血液から採った少量の血液を調べることで、血液に含まれる細胞の数や酵素、抗体(体に入り込んだ異物を取り除くタンパク質)などの数を数値化し、病気の診断や原因の特定に役立てる検査です。
血液は全身を循環し、体の隅々の細胞まで栄養や酸素を行き渡らせる働きをしているため、血液検査をすることで全身の健康状態を確認することができます。

検査結果の見方

血液検査の結果が基準範囲外の場合は、何らかの疾患があることが疑われます。
以下では、血液検査で調べられる項目とその基準値をご説明します。

血液学検査の項目と基準値

血液検査にあたっての検査項目と、その基準値についてご説明します。

赤血球

  • 女性 360~489 (×10⁴/mm³)
  • 男性 400~539 (×10⁴/mm³)

基準値の範囲外である時は、貧血や多血症などが考えられます。

白血球

  • 33~89(×10²/mm³)

基準値の範囲外である時は、白血病やがん、感染症、アレルギー疾患、膠原病(こうげんびょう)などが考えられます。

ヘモグロビン

  • 女性 11.4~14.6 g/dL
  • 男性 13.0~16.6 g/dL

基準値の範囲外である時は、貧血や多血症などが考えられます。

ヘマトクリット

  • 女性 34.0~43.9%
  • 男性 38.0~48.9%

基準値の範囲外である時は、貧血や多血症などが考えられます。

糖代謝検査の項目と基準値

糖代謝検査にあたっての検査項目と、その基準値についてご説明します。

空腹時血糖

  • 100mg/dL未満

基準値の範囲外である時は、糖尿病や肝硬変、甲状腺機能亢進症などの疾患が考えられます。

脂質代謝検査の項目と基準値

血液検査にあたっての脂質代謝検査項目と、その基準値についてご説明します。

総コレステロール

  • 140~199mg/dL

基準値の範囲外である時は、脂質異常症や家族性高コレステロール血症、ホルモンの病気や、栄養吸収障害などが考えられます。

中性脂肪

  • 150mg/dL未満

基準値の範囲外である時は、脂質異常症や動脈硬化、低栄養、肝硬変や膵炎(すいえん)、などが考えられます。

LDL-コレステロール

  • 120mg/dL未満

基準値の範囲外である時は、脂質異常症や動脈硬化、肝硬変、腎臓病などが考えられます。

HDL-コレステロール

  • 40mg/dL以上

基準値の範囲外である時は、肝硬変や脂肪肝、アルコール性肝炎、心筋梗塞、急性・慢性肝炎などが考えられます。

肝機能検査の項目と基準値

血液検査にあたっての肝機能検査項目と、その基準値についてご説明します。

AST

  • 30U/L以下

基準値の範囲外である時は、肝硬変や糖尿病、甲状腺機能亢進症などが考えられます。

ALT

  • 30U/L以下

基準値の範囲外である時は、肝硬変や脂肪肝、急性・慢性肝炎、アルコール性肝炎、心筋梗塞などが考えられます。

γ-GTP

  • 50U/L以下

基準値の範囲外である時は、アルコールの過剰摂取、薬物摂取、肝臓疾患、総胆管結石や胆道炎といった胆道の疾患などが考えられます。

腎臓機能検査の項目と基準値

血液検査にあたっての腎臓機能検査項目と、その基準値についてご説明します。

尿酸

  • 7.0mg/dL以下

基準値の範囲外である時は、痛風や高尿酸血症などが考えられます。

クレアチニン

  • 女性 0.80 mg/dL以下
  • 男性 1.10 mg/dL以下

基準値の範囲外である時は、腎臓疾患や心不全、筋ジストロフィーや肝硬変などが考えられます。

eGFR値

  • 60.0 mL/分/1.73㎡以上*

eGFRは腎機能の働きを表す値で、腎臓が1分の間にろ過することが可能な血液の量のことです。性別や年齢を加味して算出されます。基準値の範囲外である時は、慢性腎臓病などが考えられます。

異常値

基準値外の場合

検査の結果、数値に異常がある場合は何らかの疾患が起きている可能性が考えられるため、医療機関で精密な検査をするのがお勧めです。 ただし、数値が異常であっても、必ずしも病気があるというわけではありません。 確定診断を行う為に、状況に応じてCTなどの画像診断や超音波、レントゲン検査、細胞診、内視鏡などを行います。

血液検査で
再検査と言われたら?

血液検査で再検査と言われたら?血液検査結果の数値データを見ただけでは状態を認識しづらいですが、健康診断などの結果が再検査であったり、異常値が出てしまうと病気になってしまったのかと不安になってしまいます。
検査の内容について多少なりとも知っていれば、過剰に不安にならなくて済みます。
以下では、検査項目の基礎知識を簡単に解説します。

「赤血球が少ない」「貧血:要精密検査」と指摘されたとき

ヘモグロビンの値が基準値よりも下回ってしまった場合、「貧血」と判断され、要精密検査と指摘されます。
ヘモグロビンは酸素を全身に運ぶ役割を担っており、このヘモグロビンが不足すると貧血状態になります。
貧血の主な症状としては、動悸や息切れがあり、味覚異常や足のむくみ、爪の変形などの症状で貧血が発見されることもあります。
また、貧血がゆっくりと進行している場合には、症状がはっきりとあらわれない場合もあります。
健康診断の場合、基準値が少し高く設定されているため、異常値が出た場合でも必ずしも重篤な疾患があるというわけではありません。
しかし、深刻な疾患が原因となっている場合もあるため、必ず精密検査を受けていただくことをお勧めいたします。
貧血の原因としては、血液疾患や慢性炎症、膠原病、腎不全、消化管や婦人科領域の出血など多様な病気が原因で生じます。原因を調べるために、血液検査でヘモグロビン濃度や赤血球数を調べるとともに、MCVという赤血球の大きさを確認します。

「赤血球が多い」「多血症」
「赤血球増加:要精密検査」と指摘されたとき

赤血球の役割は、酸素を全身に届け、二酸化炭素を吸収することです。
赤血球の数が過剰になると、血流が滞って血管が閉塞しやすくなります。 赤血球数の数値が増加するのは、肥満や高血圧、ストレス、タバコ、無酸素運動、嘔吐・下痢などによる脱水などが関係しています。
血液検査によって、赤血球数をはじめとする血液細胞の状態を調べ、骨髄増殖性疾患などがないかなどを確認します。
また、腹部超音波検査によって、肝脾腫がないかなども確認することができます。

「白血球が少ない」「白血球減少:要精密検査」と指摘されたとき

細菌やウイルスなどを排除する役割のある白血球が少なくなると、免疫力が下がり、感染症を発症しやすくなります。
白血球の数には個人差があるため、検査の結果が基準範囲に収まらないこともよくあります。
原因としては薬の影響やウイルス感染などによる場合が多いです。白血球の減少は、稀に血液疾患など致命的となる重症な疾患によって起こっていることがあるため、注意が必要です。
最初に、感染症や、膠原病、血液疾患などがあるか血液検査で確かめることが不可欠です。

「白血球が多い」「白血球増加:要精密検査」と指摘されたとき

「白血球が多い」「白血球増加:要精密検査」と指摘されたとき最も可能性が高いのは細菌による急性感染症です。
その他に、アレルギーや副腎皮質ステロイド薬などのお薬によって白血球が増加する場合があります。 しかし、健康な方でも白血球が増加することもあり、運動、精神的負担、喫煙、妊娠などでも増加することもあります。
血液検査では、白血球数の他に、白血球の種類の割合、異常細胞の有無も一緒に確認し、白血病、骨髄増殖性疾患などの血液疾患、膠原病、感染症などを総合的に診断します。

「血小板減少:要精密検査」「血小板が少ない」と言われた場合

血小板は、血液の成分のひとつであり、血液凝固や出血を止めるための重要な役割を果たしています。
血管が損傷すると、血小板はその部位に集まり、血小板同士や血管の壁と結合し、血液を固まらせる血塊(かたまり)を形成します。この血小板の凝集と血液凝固の過程によって、傷口や損傷部位の出血が止まり、傷の修復が進みます。
血小板の数が減少すると凝固機能の低下や出血のリスクが高まるため、出血が長引いたり、軽い外傷でも出血しやすくなる傾向があります。
血小板減少の理由は多岐にわたりますが、主な原因として骨髄異常、自己免疫疾患、感染症、薬物副作用などがあります。 血液検査でチェックするとともに、脾腫の有無を確認するために腹部超音波検査などを実施します。

「血小板が多い」「血小板増加:要精密検査」と指摘されたとき

「血小板増加:要精密検査」と指摘された場合、これは血液検査の結果から血小板数が通常よりも高いことが示されていることを意味します。この場合、血小板増多症や他の潜在的な健康問題を排除するために、詳細な検査が必要であることを示しています。
血小板増加は、凝固異常や血栓症のリスクを高める可能性があり、心筋梗塞や脳梗塞などが起こりやすくなります。
血小板の数が増加する原因は、骨髄増殖性疾患などの血液疾患、出血、感染症、慢性炎症などがあり、血液検査を行って総合的に評価するとともに、脾腫の有無を確認するために腹部超音波検査などを実施する場合もあります。

紫斑(あざ)、出血傾向(血液が止まりにくい)などを認めたとき

紫斑(あざ)、出血傾向(血液が止まりにくい)などを認めたとき血管に傷がついて出血すると、まず一次止血(血小板血栓)が起こります。
血管が縮んで傷口を小さくし、血小板が傷口に集まって血栓を作ります。
その後、凝固因子が関わる二次止血が起きて止血力を強化されます。
この流れにトラブルが起きると、月経、鼻血などの出血が増加したり、紫斑が見られます。
出血が多い時は、血液検査にて血球やAPTT、PTをチェックします。
血液をきれいにするワーファリンなどのお薬の効果が強過ぎても出血しやすくなることがあるので注意しましょう。

リンパ節腫脹を認めたとき

足の付け根や頸部、わきの下、皮膚の下にぐりぐりとした皮下腫瘤が認められればリンパ節が腫れている可能性があります。リンパ節の腫れが3cmを超える場合、4〜6週間以上にわたって腫れが持続し、発熱などの全身症状がある場合、特に短期間で増大する場合は要注意です。
リンパ節の腫れは、膠原病やリンパ腫などの血液疾患、結核やウイルス、細菌などの感染症などで見られます。
超音波検査や血液検査によってリンパ節の数、大きさなどをチェックします。

血液検査を受けるときに
気を付けたいポイント

血液検査を受けるときの注意事項についてご説明します。

検査前の準備

血糖や中性脂肪などの検査項目は、食事をしてしまうと正確な検査結果が出ないため、食事の制限をして頂く場合があります。
また、普段服用している薬については、検査結果に影響がでる場合があるため、前もって医師にご確認ください。
高血圧や心臓病のお薬は検査当日の朝7時までに内服頂くようお願いします。

痛み

血液検査は、採血時に痛みを伴うことがあります。

expand_less